TMT第一期観測装置IRISが最終設計審査合格
国立天文台が推進する超大型望遠鏡TMT(Thirty Meter Telescope)計画の第一期観測装置、IRIS (InfraRed Imaging Spectrograph)の最終設計審査(FDR-1)が開催され、無事審査を通過することができました。IRISとFDR-1については、TMTの記事もご覧になってください。
IRISは日米加の大学/研究機関の研究者、技術者で構成される国際チームによって開発が行われており、日本は2013年より先端技術センターが中心となって撮像系サブシステムの開発を担当しています。
今回FDR-1開催にあたって、先端技術センターのシステム設計グループ熱構造設計チームは、これまでにない高感度、高精度観測を目指すIRISのキーとなる以下の技術課題を中心に、設計結果を合計600ページを超える技術文書及びCADモデルにまとめました。
- 撮像系サブシステムのオプトメカの設計変更
- 液体窒素温度での鏡の形状誤差をナノメートルの精度で予測するモデル手法(図1)
- 熱的外乱が生じた際の光学性能変化を予測する熱構造光学解析(図2)
- 外部の振動源による光学性能の変化を予測する振動解析
事前にオンラインで行われたQ&Aセッションに続き、FDR-1はカリフォルニア州パサデナにあるTMT国際天文台オフィス及びオンラインで2日間に渡り開催されました。先端技術センターからは清水莉沙技術員が現地参加し、口頭発表を行いました。
清水莉沙さんのコメント
国際協力型プロジェクトの設計審査にはこれまで何度か参加したことがありましたが、いずれもオンライン開催であり、現地で参加したのは今回が初めてでした。先端技術センターをはじめとするNAOJチームで検討してきた内容が、今回このような形で認められたことを大変光栄に思います。
最も嬉しかったのは、これまでオンラインでやり取りしていたメンバーと、実際に会ってお話しできたことです。他機関のエンジニアと交流する中で、NAOJチームの仕事に対する信頼の高さを随所で感じました。今後もその信頼に恥じないような仕事をしていかなければならないと、改めて気が引き締まりました。
今回、IRIS国際チームは製造に向けた大きなマイルストーンを通過することができました。今後は製造に向けた環境整備や発注準備、検証計画の詳細化に取り組みます。
図1:液体窒素温度での鏡の形状誤差をモデル化するために、160 mm角の凹面鏡をクライオスタット内で液体窒素温度まで冷却し、フィゾー干渉計による測定を行った。左は測定セットアップ、右は作成されたFEAモデル。
図2:撮像系のCADモデル(右)と、熱的外乱が生じた際の光学性能変化を予測するFEAモデル(左)。色は変形量を表す。変形は誇張して表示している。
用語説明
注1. FDR:最終設計審査会(Final Design Review)
注2. FEAモデル:有限要素法解析(Finite Element Analysis)に使用するモデル
注3. 液体窒素温度:液化した窒素の温度で、約摂氏マイナス196度
注4. フィゾー干渉計:フィゾー干渉計:光が干渉する性質を用いて光学面の形状を測定する計測手法の一つ
関連先リンク
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