ご紹介

先端技術センターは、国立天文台における技術開発の中核となる組織で、電波から赤外線・可視光・紫外線まで、地上・宇宙を問わず、先端的な天文学の観測装置の開発拠点です。
天文学の進歩は、いうまでもなく新しい観測手段の開発によってもたらされます。国立天文台が推進するプロジェクトの実現には、常にその時代の限界に近い技術課題を克服していく必要があります。また少し先の時代を見据えた基礎技術の開発もたいへん重要です。
先端技術センターは、高度な観測装置の設計から製作・試験までを一貫して実施する物づくりのための組織です。 このため、先端技術センターには、超伝導ミキサーや衛星搭載望遠鏡の開発が可能な高品質・大型クリーンルーム、各種の光学試験設備、精密工作装置、特殊コーティング装置など世界最高水準の設備が共同利用に供され、天文台内外の研究者・技術者に活用されています。現在進行中のプロジェクトへ向けた観測装置開発だけでなく、次世代の観測装置に必須の基礎技術の開発にも取り組んでいます。

組織

開発体制を組織的に強化することを目的とし、先端技術センターでは本格的に組織の在り方を検討してきました。その結果、2021年度にマトリクス型組織への組織改編を行いました。これにより、プロジェクト間に跨る技術の共有に基づく効率的な開発や、人員の最適配置が可能になります。
先端技術センターの組織は、設備の管理・運用、事務支援を担う「開発推進グループ」、観測装置の研究・開発を担う「先端ミッション機器開発グループ」、装置の具体化におけるエンジニアリングを担う「システム設計グループ」、コンポーネントや部品の製造を担う「製造設計グループ」の4つのグループから構成されています。
2023年、産業連携活動を推進する組織として「社会実装プログラム」を立ち上げ、活動しています。 >>> 詳細はこちら

沿革

現在の先端技術センターの前身である天文機器開発実験開発センター(1993年設立)は、Suprime-Camなどの「すばる望遠鏡」に搭載される観測機器、補償光学装置、 気球や観測ロケット搭載装置、太陽観測衛星「ひので」に搭載した望遠鏡などの開発拠点として大きな役割を果たしてきました。しかし、 その後の天文学の急速な進展に対応して開発体制の充実強化が必要との認識のもと、2005年8月に旧センターとアルマの受信機グループを統合し、先端技術センターが発足しました。

:出来事

:主なプロジェクト観測装置

1991 (平成 3年)

4月
・技術開発体制整備の準備のため「技術センター」発足

1993 (平成 5年)

4月
・「天文機器開発実験センター」発足。6人で活動開始

1994 (平成 6年)

3月
・赤外線観測装置試験用赤外シミュレータ建設
4月
・赤外シミュレータと卯酉儀の立上
・共同利用開始
・開発実験棟(現・開発棟1号館)竣工

7月
・赤外シミュレータ ファーストライト

1995 (平成 7年)

4月
・赤外シミュレータ共同利用開始

1996 (平成 8年)

3月
・中型蒸着装置設置
・IBS装置設置

1998 (平成10年)

12月
・すばる望遠鏡主焦点カメラ Suprime-Cam (Subaru Prime Focus Camera)ハワイ観測所へ出荷

2000 (平成12年)

4月
・すばる望遠鏡36素子波面補償光学装置 AO (Adaptive Optics)ハワイ観測所へ出荷

12月
すばる望遠鏡36素子波面補償光学装置 AOファーストライト

2001 (平成13年)

3月
・超精密旋盤加工機設置

2003 (平成15年)

1月
・高度環境試験棟(現・開発棟2号館)Ⅰ期棟(東側)竣工

2005 (平成17年)

4月
・「超精密加工ユニット」の立上

8月
・先端技術センターに改組
・アルマ望遠鏡受信機バンド4、8、10グループが先端技術センターに移籍
9月
・赤外シミュレータを広島大学に移設

2006 (平成18年)

2月
・高度環境試験棟(現・開発棟2号館)II期棟(西側)竣工

3月
・野辺山宇宙電波観測所より超伝導デバイス製造装置を移設
4月
・「光検出器開発ユニット」の立上

9月
・太陽観測衛星Solar-B(ひので)打上成功

12月
・中型蒸着装置設置移設を岡山に移設

2007 (平成19年)

3月
・すばる望遠鏡超広視野主焦点カメラ HSC (Hyper Suprime-Cam)サブプロジェクト(開発グループ)発足
4月
・「スペースチャンバショップ」の立上

2008 (平成20年)

2月
・国際外部評価
4月
・「スペースオプティクスショップ」の立上

7月
・新CCD(完全空乏型CCD)を搭載した すばる望遠鏡主焦点カメラ Suprime-Camをハワイ観測所に出荷

2009 (平成21年)

4月
・「マシンショップ」「デザインショップ」「超精密ユニット」を統合し、「メカニカルエンジニアリングショップ」に改組

2010 (平成22年)

1月
・アルマ望遠鏡バンド8カートリッジ1号機をチリ(合同アルマ観測所(JAO))に出荷

2011 (平成23年)

2月
・ワイヤ放電加工機増台
10月
・TMT第1期観測装置IRIS (Infrared Imaging Spectrograph)チームの立上

12月
・アルマ望遠鏡バンド10カートリッジ1号機をチリ(合同アルマ観測所(JAO))に出荷

2012 (平成24年)

3月
・すばる望遠鏡超広視野主焦点カメラ HSC (Hyper Suprime-Cam)をハワイ観測所に出荷

4月
・大型低温重力波望遠鏡 KAGRAとIRISを重点領域開発に位置づけ

2013 (平成25年)

1月
アルマ望遠鏡バンド4ファーストライト
・すばる望遠鏡超広視野主焦点カメラ HSC全CCDを使ったファーストライト

7月
すばる望遠鏡超広視野主焦点カメラ HSCファーストライト画像初公開

2014 (平成26年)

2月
アルマ望遠鏡受信機バンド4、8、10 全台数(216台)出荷完了

3月
・KAGRA防振系のキー技術であるマルエージング鋼製板バネ(geometric anti-spring)の国産化に成功

4月
・アルマ望遠鏡受信器バンド4、8、10開発チームを再編成し、「アルマ受信機保守」「先端受信機開発」「望遠鏡受信機開発」の3チームを立上

2015 (平成27年)

4月
・太陽観測ロケット実験 CLASP (Chromospheric Lyman-Alpha SpectroPolarimeter)米国(NASAマーシャル宇宙飛行センター)に出荷

7月
・アステ望遠鏡(アタカマサブミリ波望遠鏡実験)搭載用電波カメラ開発グループが野辺山宇宙電波観測所から先端技術センターに移籍

2016年 (平成28年)

3月
・TMT棟(現・開発棟3号館)建設

2017 (平成29年)

8月
・KAGRA 防振系用トラバーサー 3台 納品完了

2018 (平成30年)

9月
・KAGRA防振装置部(Xエンド)の出荷・現地据付
11月
・CLASP2米国(NASAマーシャル宇宙飛行センター)に出荷

2019 (平成31年/令和元年)

4月
CLASP2打上成功
6月
・KAGRA防振装置部(Yエンド)の出荷・現地据付
・KAGRA光学装置部の出荷・現地据付

8月
・金属3Dプリンタ導入
9月
・5軸マシニングセンタ導入

2021 (令和3年)

4月
・先端技術センター内グループを改組し、「システム設計」「製造設計」「先端ミッション機器開発」「開発推進」の4グループを立上

8月
・SUNRISE-3 近赤外線偏光分光装置 SCIP (Sunrise Chromospheric Spectropolarimter)をドイツ(マックス・プランク太陽系研究所)に出荷
10月
CLASP2.1打上成功

2022 (令和4年)

3月
・ワイヤ放電加工機更新
・国際外部評価

7月
・SUNRISE-3 打上

2023年 (令和5年)

4月
・先端技術センター内に「社会実装プログラム」を立上
「量子コンピューター適用プロジェクト」チームと「補償光学応用プロジェクト」チームを設置

量子コンピューター適用プロジェクトチーム
補償光学応用プロジェクトチーム

2024 (令和6年)

1月
・「社会実装プログラム」に「大型宇宙分割望遠鏡プロジェクト」チームを設置
2月
・「保全」グループを立上げ、「望遠鏡」チームを設置

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